高次機能障害に対するリハビリテーション

■高次脳機能障がいとは?

 脳の部分的な損傷により、記憶、注意、行為、思考、学習、言語などの機能に障がいが起こった状態を「高次脳機能障がい」といいます。
症状として、記憶障がい、注意障がい、遂行機能障がい、行動と感情の障がい、地誌的障がい、失行症、失認症、半側空間失認、失語症等が現れます。
しかし、外見上はその障がいが分かりにくく、日常生活や社会生活への適応が困難でありながら社会保障や支援が得られないまま多くの当事者や家族が悩んでいます。

■高次脳機能の特徴

高次脳機能障がいの症状には、3つの特徴があります。
 ①外見上は障がいが目立たない
②本人自身が障を十分に認識できていないことがある
③障害は、時間や疲労、環境・状況により著しく変化する

 また、症状は重複していることが多く、症状の重なり方によって障がいの状態は一人ひとり異なっています。
 *詳しくは、下記をご参照ください。

・「高次脳機能障がいって何だろう?~大分県高次脳機能障がいパンフレット~」
http://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/13119.pdf

・「高次脳機能障害支援ハンドブック~高次脳機能障害とともに歩む~」
http://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/1043927.pdf

■リハビリテーションの流れ

回復期リハビリテーション

 当院では病気や事故で入院した急性期病院から、病態が安定した方を受け入れ、集中的なリハビリテーションを行っています。
高次脳機能障がいのリハビリテーションでは、まずその方の症状を正確に把握することが大切です。検査を行うことにより、障がいされている能力だけでなく、障がいされていない能力を把握することができます。その結果を元に、ご本人やご家族に今の状態を理解していただき、リハビリテーションの方針を決定します。 回復期は、改善がより期待される時期と言われており、積極的に運動障がいや高次脳機能障がいの機能回復を促していくことが必要です。
入院中のリハビリテーションにおいては
 ・ご本人の高次脳機能障がいの評価、日常生活や社会生活を営む上で、考えられる課題の把握
 ・ご本人のトレーニング
 ・ご家族の障害理解の援助
等を行っており、大きな目的は以下になります。

1.障がいされている能力自体を訓練で向上させていく「機能訓練」
2.保たれている能力を有効に活用する技術を身につける「代償手段獲得訓練」
3.周囲の人との関わり方やご自宅の環境を変えることで生活しやすい状況を提供する「環境調整」



外来リハビリテーション

 高次脳機能障がいは、残念ながら病院に入院しながら行うリハビリテーションのみではその問題は解決しません。むしろ、退院した後の生活が本当の意味でのリハビリテーションと言えます。

 当院では、回復期リハビリテーション病棟を退院しご自宅で生活をされている方、病気や事故からは経過を重ねている方で生活や学校、お仕事において困りを感じていらっしゃる方に対し、通院によるリハビリテーションを行っております。

 退院後のリハビリテーションにおいては、安定した生活の構築を図り、問題が起きた場合には即座に対応できる体制を取っています。高次脳機能障がいのリハビリテーションは長時間かかり、その内容も医学的リハビリテーション、生活訓練、職業・就労支援など多岐にわたります。


復学、復職へのアプローチ

 若年者では高次脳機能障がいを発症する主な原因として、交通事故や業務中での事故も多く、復学や復職を含めた社会復帰への訓練・支援が重要となります。残存能力と障がいされた能力の双方を考慮し、できること・できないことに対する工夫や代償方法のアドバイス、学校や職場等の復帰先での環境・人員配置等を含めた情報交換を行います。



自動車運転再開に対するアプローチ

 高次脳機能障がいは65歳未満の生産年齢に相当する方が多く、その方が暮らす地域の状況や仕事を継続する上で自動車運転再開を望まれる方がいらっしゃいます。

 当院では、神経心理学的検査とドライビングシミュレーターを実施するだけでなく、必要に応じて自動車学校と連携し運転能力の評価を行っております。合併症や内服治療の状況、高次脳機能障がいの程度により自動車運転再開が難しい場合もありますので、その場合には公共交通機関の利用に対する訓練等を実施する場合もあります。

■終わりに

 高次脳機能障がいの方が住み慣れた地域社会で自身の持っている能力を存分に発揮して生活していくためには、ご本人およびご家族をはじめとする周囲の方が、高次脳機能障がいと言う障がいを知り、正しく理解することが大切なポイントであると考えます。