インフォメーション 〜time now〜

今回は、介護診療報酬引き下げについて書こうと思ったのですが急遽変更することにしました。その理由は、私のある経験を『タイムナウに載せた方がいい』と言うアドバイスを頂いたからです。

その経験というのは、私が数か月に渡りケニアへ赴任をした際のお話です。以前にも、タイムナウ(H26・12月)を通じてケニアのテロについて詳細に報告しましたのでご存知の方も多いと思いますが、ケニアの情勢を説明させて頂かなければこれからお話しする内容をご理解頂けないので再度簡略して書きます。ケニアは隣国のソマリアと対立しており、ソマリアのイスラム過激派アルシャバーブから頻回にテロ攻撃を受け多くの尊い命が奪われています。それに加え、ケニアから独立を目指す(国内の)非合法組織によるテロ、政治的な対立から起こるテロなどもあり危険な状況にあります。更にケニアは、強盗・窃盗・カージャックなどが日常茶飯事に起きます。しかも、犯人の殆どが武装しており銃を所持しています。勿論、普通の生活を送れますが、日本で暮らす何倍も不安や危険を感じ、安全にも注意を払います。

そんな暮らしを海外でしていた私の目に飛び込んだのがイスラム国による日本人誘拐事件のニュースでした。もしも、日本で暮らしていたのならこんなに近くにテロの脅威を感じることもなかったので「大変だなぁ」とか「大丈夫かな」と気にかける程度だったと思います。当然「お二人の命を救って欲しい」との思いはありましたがその反面「政府にお金を払わずに他の方法で何とか救って欲しい」という気持ちもありました。何故なら、簡単に日本政府が以前の様にテロリストにお金を払ってしまうと、海外で暮らす邦人がテロに限らず犯罪者の標的となり狙われるからです。私は、そう考えながらこの事件の成り行きを見守っていました。結果、安倍総理の「日本はテロには屈しない」という強い意思のもとお金は渡さずお二人は残忍なやり方で命を奪われました。本当にイスラム国やテロは許せません。しかし、ケニアで暮らしている私にはこのニュースは他人事ではなく、この時に少なからずとも「お金を払わなくて良かった」と思う自分が居ました。「お二人がお亡くなりになったのに、なんてことを考えているの?」「私は、人としての感覚おかしくなったの?」と人間の根源的な属性と実際に自分の身に降りかかるかもしれない禍患への懸念が湧いた事により理性と感情が相剋し葛藤、マドルスルーに陥りました。これは、テロの脅威を実感したからこそ起こったのだと思いました。

この経験から様々な事を真剣に考えました。例えば、性善説の通じない現実の世界でこれまでと同じ対応で日本国は国内外で暮らす邦人を守ることができるのだろうか?我が国にも邦人を救出する特殊作戦部隊が存在しますが海外での救出はできませんし、米・英のような諜報機関がなく(?)詳細な情報収集能力が日本には欠けていると思うので無理です。各国に防衛駐在官が赴任するようにはなりましたが、これだけでは不充分です。大使館の方々も邦人を守るために尽力してくれていますが、実際の救出となると困難でしょう。国も国民も今回の経験を忘れずに活かして真剣に考えなくてはいけません。日本もテロ対策について真摯に取り組まなければいけない時なのです。今回の残酷な殺害映像を見る前に、殺害された方の詮索や非難をする前に大切な事を日本人は忘れていないでしょうか?所詮、他人事にはなっていないでしょうか?これがお伝えしたかった私の経験した事と意見です。

岩根 美紀