インフォメーション 〜time now〜

 いよいよ、2014年も終わってしまいますね。私達が平和な毎日を送っているのに世界では悲惨な事件が起こっています。ジハード主義を狭義に捉えた人々が14ヶ国で、罪のない人達の殺戮をくり返しています。死者は、5042名にのぼり一日に168名が亡くなっています。特に、アフガニスタン、シリア、ナイジェリア・イラクの4ヶ国は悲惨です。アラブの春は束の間だったのです。アルカイダのあとにボコハラムやタリバンなど過激なイデオロギーを持つ集団は後を絶ちません。どうにかならないのでしょうか?

 今回は、馴染み深いケニアのお話をします。現時点で外務省からケニアへの渡航には、注意勧告が出されています。確かにケニア国内は、緊張状態にある事を否定しません。

 ケニアが緊張状態に陥っている一つ目の理由はソマリアとの対立です。ケニアとソマリアがこれほどまでに何故敵対し合うのかをお話しましょう。元々、2011年にケニアの外国人観光客をソマリアの過激派が誘拐し、ケニア政府が、国の安全を守り、重要な資金源である観光客を誘致するために同年10月にケニア軍をソマリアに進攻させた事から対戦が始まりました。それから、報復と復讐が繰り返されています。ケニアにテロ攻撃をしているのは、イスラム過激主義のアル・シャバーブ(AS)です。ASのケニアへのテロが今年は特に頻発しています。今年だけでも、ギコンバマーケット爆破、バス襲撃による男女29名の教師殺害、そして石切り場の労働者も大勢殺害されました。全ての事件が悲惨で驚きましたが、私が一番驚いたのは、ASが女性も平然と殺害する様になった事です。イスラムと非イスラム教徒をわけて無差別に殺害しているのです。イスラムと非イスラム教徒の見分けをするためにASは、イスラム教についての質問をします。例えば「ムハンマドの母親は誰?」などイスラム教徒であれば絶対に応える事の出来る質問をするそうです。以前は、ケニアの外国人をターゲットにしていたASが現在ではケニア人をターゲットにする様になったのです。これは、一説にケニア国内のイスラムと非イスラム教徒の対立を煽り、ケニア国内で紛争を起こさせるためだと言われています。ASは、2012年のアメリカ軍の空爆により、偉大だった指導者を亡くし、それに加えソマリア中南部の拠点も占拠され失っており資金源も無くなりました。ですから、ソマリアでのASの力は弱まっているのは確かですが、まだ一定のテロを起す予備力があるのも事実ですし、ジハード主義を掲げ、イスラム過激主義に傾倒する若者がいるのも現実です。私は、困った時の神頼み程度の人間ですが、人殺しを赦す神など決して存在しないと思います。イスラム教にも、人の命を奪ってはいけないという教えがあります。宗教・民族問題は本当に複雑です。

 二つ目の理由です。モンバサにある非合法組織であるモンバサ共和評議会がケニアからの分離独立を果たす為にテロを起している可能性が高く、更に政治的な対立からもテロや襲撃を起している可能性もあるのです。そして、それぞれの組織が何らかの形で事件に関与している内部犯行(ケニア国民)の可能性が大変疑わしいのです。

 私は、ケニアで一度も事件などに巻き込まれた事はありません。普通に出歩きますし、車の運転もしています。但し、時間帯や道路は選びますし、周囲にも注意を払っています。ただただ、ケニア国民の冷静な判断と行動、そして何より安全と平和を祈るばかりです

ケニアは、気候も良く本当に過ごしやすい良い国です。ナイロビは、大自然と大都会が共存している不思議な場所です。百聞は一見に如かずですが遠い国なので訪れるのは無理かもしれませんが、私の経験を掲載する事で一人でも多くの皆さんが、ケニアに興味を持ち、実情を正しく理解して知って頂き好きになってくれるといいなぁ…と思います。

平成26年12月 諏訪の杜病院 副院長 岩根美紀