インフォメーション 〜time now〜


 time nowを担当します。浅倉恵子です。先月まで、No.2を担当していた岩根より引き継ぎ、当法人の役職者でバトンを繋いでいきます。

 早速ですが、私は現在ケニアに赴任しています。今回、2~3ヶ月の赴任を通して、リハビリテーションに対する意識の違いを肌で感じています。特に…
① 救命だけが優先され、生活の質を見据えたリハビリテーションの概念が皆無。
② 緩和ケアなど対症療法にとどまり、予防的な視点で将来まで見据えられていない。
③ 日本のように、当たり前の医療を当たり前に受けられない(社会制度やお金がない)。

 この3点においては、ケニア国民にとって切実な課題であると感じています。今年5月のtime now「ケニアの医療実態」で紹介された足部の開放骨折術後の彼もその1人です。手術は無事にできたものの、リハビリテーションを継続するお金が工面できず、全く患足を動かさないまま半年が経過してやっと、私たちのリハビリテーションセンターへつながりました。日本であれば、とうにリハビリテーションは終了し、社会参加できていたはずです。彼のように、他の患者さんでも廃用症候群により、生活自体もままならない方が多いのがケニアのリハビリテーションの実態です。また、現地セラピストの考え方も大きく異なります。「痛い」という患者さんの痛みを緩和するのが、私たちの役割で、それ以上の介入は必要もなければ大きなお世話であると言わんばかりに疑問や抗議をしてきます。それでも、新しい分野に「自分は経験がないから患者さんに入れない」と言っていたセラピストが、作成した資料を読み込み、来院した患者さんに資料片手に、一生懸命説明している姿を見た時には、胸が熱くなりました。文化や生活環境が異なるこの地で、少しずつ歩み寄りながら、より良い医療が提供できるように、互いにサポートしていきたいと思います。リハビリテーションに限らず、「助かる命が助かっていない」というケニアの医療の現状も目の当たりにしています。

 さて、みなさんは米中間選挙の結果をどう感じましたか?私は、共和党候補者の過激な思想に現在のロシアのウクライナ侵攻や中国の台湾侵攻など利己主義的な思想の国が、さらに増えるのではないかと固唾をのんで見守っていました。蓋を開けてみれば多くの識者が予想していた「赤い津波の襲来」=共和党の大勝とはなりませんでした。

 人は学びの中から利他主義的な行動が起こせる唯一の生物であることが分かっています。「受けるよりは与えるほうが幸いである」(『新約聖書』「使徒言行録」20 章35 節)とあるように、単に道徳の観点から良いとされるだけでなく、人間の健康と幸福にとって良い効果を持つことが、現代の科学的研究によって明らかにされているのです。それが個人の幸せにとっても社会の問題解決(調和)にとっても有効性を持つことが示されてきています。今回の米中間選挙は極端な利己主義的な思想に国民が「No」と突き付けた結果だと感じています。ロシアの富裕層や知識層20万人以上が国外へ脱出しているニュースや中国で起きたゼロコロナ政策に対するデモなど、国民が国に「No」と伝えることができ、これ以上、利己主義的な思想が許される世界へと進まないことを切に願っています。


令和4年11月 タイムナウ 光心会 どんぐりの杜クリニック 浅倉恵子