インフォメーション 〜time now〜


 10月に入って、日差しが柔らかくなったと思った途端に、急に寒くなりましたね。体温や室温調整をしながら、基本的な感染予防と、まめな水分補給を忘れずにして体調を整えてください。

 2009年2月に掲載を始めたタイムナウは、この10月で13年8カ月になります。最初の頃の文章を読み返すと、今よりも更に稚拙な内容や文でお恥ずかしい限りです。でも、自身の置かれていた状況や覚悟、そして誰にも打ち明けられなかった葛藤がリアルに蘇るので、懐かしいやら何やらで複雑な気持ちになります。多分、タイムナウを毎月読まれている皆さんは、ホームページも隅々までチェックされている方々だと思います。病院に私の紹介がなくなり、心配された方も多いと思いますのでご報告させていただきます。ご存じの通り私共はケニア共和国でも医療活動を展開しておりまして、ケニア政府に認可され正式な活動を始めて来年で10年を迎えます。現地NGOは、長期的且つ定期的な活動により、関係者や機関に信頼を寄せていただいています。現在、医療系の大学2施設や2つのカウンティの保健省とMOUを締結しています。更に、国立病院ともMOU締結の最終段階に入っています。2016年から始めた医療者の知識と技術向上のための活動も継続しています。また、巡回診療だけでなく学童健診も昨年から始めました。こうなると、二足の草鞋が能力的にも体力的にも履けなくなると言う嬉しい悲鳴のために、今後はこれらの活動に専念することになりました。本来ならば、長期に渡り私の駄文にお付き合いくださった皆様には、先にお知らせすべきでしたが、法人内での公表の予定との兼ね合いがあったため、あえて公表を今月のタイムナウまで遅らせました。ご勘弁ください。長い間、本当に有難う御座いました。

 ケニア共和国での巡回診療や学童健診は、遣り甲斐もありますが課題も沢山あります。私たちの開催しているメディカルキャンプは、100回を超えても延べ65,000人余りの貧困地区の住民にしか手は届いていません。国の制度を変えることも、十分な医療を提供することもできませんが、同じ場所に根を張って、長期的にその国の人たちと行動を共にして活動し関わることに価値があるのだと思うことばかりです。所詮、先進国で生まれ育った私の思いつくことなぞ、理想論でとても浅はかなのです。今日、明日の飲み水や食べ物、今の現金収入の事しか考えられず、将来設計の目処もない彼らの価値や優先すべき問題はそれ以前にあるのです。彼らのおかれた状況や彼らが欲することとその理由が痛いほど解るようになりました。「だから、あなたたちは駄目なのよ。」などとは思わなくなったし言えなくなりました。とにかく、コツコツと共に経験して、学び合い支え合うしかないのです。彼らが医療に触れ、自身や家族の健康に関心を持ったり、家族計画や感染予防の知識を身につける機会は大切です。確実に何かは生み出しています。この小さな地味な活動も、何時かは誰かの未来を変えることに繋がるかも知れません。そう信じて、これからもできる限り前を向いて続けたいと思います。見守っていてください。それでも、ある方からつい最近、「皆さんの活動が認められなかったら、ケニアで誰が認められるのですか?こんなに長く、自分たちの力(自己生産型)で、頑張っておられるのに。」と有難いお言葉をいただきました。「見てくれている方もいらっしゃるんだなぁ」と目頭が熱くなり、パワーをいただきました。活動を褒められなくてもいいのです…関心を持っていただけているのが嬉しいのです。イギリスの統計学者・医療社会学者のカレン・ダンネル氏が、貧困地区と富裕層の暮らす地区を調査したら、平均寿命が8歳も違ったそうで、「貧しければ早く死ぬ、というのは最も不公平な結果です。私たちは貧富の差で広がっている平均寿命について懸念するべきです。このリスクを減らすために、福祉や年金、労働条件など全ての人のために、これを改善するための政策が必要です。」と述べられていました。その通りだと強く思います。貧しいが故に、栄養が十分摂れなかったり、重労働や長時間労働を強いられたり、受けるべき治療が受けられなかったり、学ぶ機会さえもないというのは、本当に不平等で悲しく辛いことだと思います。皆さんも、出来る時に出来る事を、誰かにしてください。

 若い頃の私は、勿論経済力が十分になかったのですが、そのお蔭で生活力が向上しましたし、お金の使い道にもメリハリがつき善く使えるようになりました。お金は、人生に選択する余裕を与え豊かにします。そして、労働に価値も与えてくれます。労働が私に価値を与えたのかもしれませんが…。蓄えが沢山あればいい訳でもありません。他人に迷惑を掛けない程度の蓄えをして、「自由に生きる」ための支えにするのです。どうか、働くことにも貯蓄することにも、お金や時間を使うことにも自分なりの意義を持って日々を過ごしてください。皆さまが、実りある豊かな人生を、笑顔で歩まれることをお祈りしまして、お別れの挨拶にかえさせていただきます。


令和4年10月 タイムナウ 岩根