インフォメーション 〜time now〜


 こんにちは。今回time nowを担当させていただきます 諏訪の杜病院 回復期病棟看護師の高瀬 絵梨香です。よろしくお願いします。

 私が諏訪の杜病院に入職してから約10年が経ちました。入職当時、准看護学生として学校へ通いながら看護助手として従事し、准看護師免許取得後は有資格者として仕事と学業の両立に奮闘しながら正看護師免許取得を目指しました。結局、資格取得までに7年もの時間を費やしましたが、今となって振り返れば、この7年という時間は私の“看護観”を育むために必要な時間だったのではないかと思えます。私の看護観というのは「患者さんと、ご家族の側に寄り添える専門職者」です。そうなりたいと思うきっかけになったのは、学生時代に実習で担当させていただいたターミナル期(ステージⅣの末期)にある患者さんの一言でした。

 年齢や病状から手術の適応にはなく、ご家族は「本人の苦痛が少しでもとれて、1日を穏やかに過ごせたらいいな」と話されていました。しかし、食欲の低下や痛み、黄疸も出現しており入院中は、ほとんどをベッドで過ごされていました。全身を襲う痛みで離床する事も難しく、排泄もベッドサイドのポータブルトイレを使用するか、オムツを着用して済ませていました。

 学生である私には、援助ができる項目に限りがあり、担当期間中に患者さんに出来たことと言えば、ベッドサイドでお話をお聞きしたり、痛む部位を擦ったりすることくらいでした。状態がいい日は何とか車椅子に移乗し、病棟内を一緒に散歩したり食堂から外の景色を眺めたりして過ごしていましたが、当時の私は「私の一方的な思い(込み)だけで、無理に離床させてしまっているのではないか」「痛みを訴えられているのに痛みをとってあげられない」と悩み葛藤し、無力感にさいなまれる日々を送りました。

 そんな実習期間を送る中で、患者さんが緩和ケア病棟へ移る日を迎えました。しかし、言葉が見つからず、声を掛けられないでいる私に、「あなたがいてくれてよかった」と仰ってくださったのです。その一言がとても嬉しく、悶々としていた私には何よりの救いになりました。その患者さんにとって一緒に居たという事が一番の看護だったのかもしれないと、提供した看護を改めて振り返る契機となり、この経験が、私の看護観に繋がりました。

 “寄り添う”といっても、患者さん一人ひとりで意味合いは変わると思います。出来る限り患者さんが必要としている寄り添う形を考え、入院中の援助が出来たらいいなと考えて日々患者さんと接しています。そして、当院を退院するときに私が担当でよかったと少しでも患者さんやご家族に思っていただけるように、これからも頑張っていきたいです。






5月タイムナウ 諏訪の杜病院 高瀬 絵梨香